笑っ て よ 君 の ため に 笑っ て よ 僕 の ため に

#8 君のために僕ができること

笑っ て よ 君 の ため に 笑っ て よ 僕 の ため に

そしてつい先ほど桧山くんが持参したこの書類には、マトリが彼らの企みを逆手に取り、泉がおとり捜査をすることが正式に決まったという内容が書かれていた。 彼女を失いたくない。 僕も彼女の目を強く見つめた。 「雄喜?・・・」 彼女の声が空間ではなく、直接肌を通して僕に伝わった。 「そうやって君は・・・ずっと一人でがんばってきたんだね・・・今まで・・・」 彼女から笑顔がスッと消えた。 そうだったね。 それが十八歳の女の子ならなおさらのことだ。 きっと咲季に似たすっごく可愛い女の子だと思うな」 それを聞いた彼女は噴出すように笑い出した。 「うん、何?」 「明日、例の密売人の元へ……おとり捜査をしに行くことが決まりました」 「……へぇ」 僕はデザイン画から視線を上げないまま呟いた。 ダメって決めつけないでよ! そんなの君らしくないよ!」 彼女は小さく首を横に振った。 そしてその小さな体をそのまま強く包み込んだ。 「私にしか、できない仕事です……」 「僕は、君みたいな頼りない子に、こんな重責を背負わせる特殊な体質ってやつが、憎いとすら思うよ」 言葉とは裏腹に、囁く自分の声がいつもより甘い。 明日、手術になっちゃった。 前に睨めっこした時とは何かが違った。 「・・・・・」 「もういいから・・・帰って」 彼女は振り絞ったような声で言った。 「え! 雄喜?」 「うん・・・」 彼女はこんな時間に僕が尋ねてきたことに非常に驚いていたが、笑顔で迎えてくれた。 華奢な体で悪に立ち向かう彼女を、一番近くで守ってやれるのは自分ではない。 病気のこと嘘ついてたのは私だもん。 ちょっとのことで大袈裟に笑ったり、わざと大きくはしゃいだり、それでいて嫌われないように調子よくみんなに合わせたりして。 私の好きな歌の中に さだまさしの『道化師のソネット』があります。 涙を堪えた小さな声で・・・。 「死んだら・・・死んじゃったら、君と逢えない寂しさも感じなくなっちゃうのかな・・・」 彼女は笑いながらそう言った。 死の恐怖へも立ち向かってきた強い人間だと。 でもそれが分かったからといって、そんな彼女に僕は・・・何もしてあげられない。 咲季のそばにいる」 彼女はびっくりした顔で僕を見た。 「なに?」 「今の雄喜が・・一番いいと思うから・・」 「あらたまって何言ってるの? 会うの最後ってわけじゃないし」 「ふふ。 私に正直に病気の本当のこと教えてくれて。 私、神楽さんが思ってるほど弱虫じゃないです」 泣きそうな顔を歪め、泉はクシャッと笑った。 いつもの活発で明るい彼女からは想像ができない、初めて見る彼女の弱々しい姿だった。 「ううん。 「ごめんなさい、急に呼び出したりして。 さだまさしさん『道化師のソネット』の歌詞をブログ等にリンクしたい場合、下記のURLをお使いくださいませ。 雄喜みたいにいつも正直に生きらればいいのにね」 「どうしたの? やっぱり今日の咲季は全然咲季らしくないよ・・・」 彼女は僕の顔をじっと見つめたあと、視線を逃がすように窓のほうに向けた。 このまま時間が止まって欲しい。 その視線に僕は咄嗟に下に目を逸らしてしまった。 涙をためた大きな瞳が、僕の目の前で揺らいだ。 「……大丈夫か?」 気遣わしげな視線に、僕はサラッと微笑み返した。 お母さんにはとっても感謝してるのにさっきも酷いこと言っちゃったし、君にも素直になれないし。 私よりお母さんの方が辛いかもしれないのにね」 僕は黙って頷いた。 夜、部屋の電気を消すと、深いに闇に吸い込まれそうで怖くて消せないの・・・。 彼女の髪が僕の頬に絡む。 でも、こんな寂しい笑顔は初めてだった。 「嫌だ!」 僕は叫んだ。 「私、ずっと突っ張って生きてきたから、素直さ忘れちゃったのかもしれないな・・」 そうなんだ。 「私らしく・・・か。 彼女の眩しい笑顔はその不安と恐怖の裏返しだったんだ。 君は本当に魅力的な女の子だ。 だから、大丈夫」 そう、きっと大丈夫。 初めて抱いた彼女の体は思ったより華奢で、今にも壊れそうな感じがした。 「うん。 でもそれは違った。 「なんだよ、自分から訊いといて・・・」 「ごめんごめん。 「どうするって……何が?」 「玲ちゃん。 彼女の他には誰もいない。 でもそう思えば思うほど涙が溢れ出てくる。 「私と一緒にいたおかげだよ」 そう言いながらまた明るく微笑んだ。 「雄喜?」 「咲季のそばにいたい」 「ふふ・・・君らしくなくカッコいいね」 彼女は笑って言った。 私が悪いの。 涙をぽろぽろ流しながら。 前からあったように。 本当はすごく嬉しいんだ。 「泉はヘラヘラ笑って、幸せそうな顔してればいいんだよ」 そう、いつも僕と二人でいる時みたいに。 いきなりだよね・・・」 「それで、君のそばに居てくれって、お母さんが電話をもらった・・・」 彼女は俯いたまま静かに笑った。 歌手: 作詞: 作曲: 笑ってよ君のために 笑ってよ僕のために 僕達は小さな舟に 哀しみという荷物を積んで 時の流れを下ってゆく 舟人たちのようだね 君のその小さな手には 持ちきれない程の哀しみを せめて笑顔が救うのなら 僕は道化師 ピエロ になれるよ 笑ってよ君のために 笑ってよ僕のために きっと誰もが同じ河の ほとりを歩いている 僕らは別々の山を それぞれの高さ目指して 息もつかずに登ってゆく 山びと達のようだね 君のその小さな腕に 支えきれない程の哀しみを せめて笑顔が救うのなら 僕は道化師になろう 笑ってよ君のために 笑ってよ僕のために いつか真実 ほんとう に笑いながら 話せる日がくるから 笑ってよ君のために 笑ってよ僕のために 笑ってよ君のために 笑ってよ僕のために. そのことは少し前から分かっていた。 (僕はもう……本当に君しかいらないんだよ) 痛いほどの好きが身体を走った。 今度は彼女から僕の体を包み込んできた。 彼女がとても愛おしかった。 真っ白だった。 僕はゆっくりと病室のドアに手を掛けた。 君の顔をよく見ておきたいなあって・・・」 「変なこと言わないでよ」 「別にいいよ・・・嫌なら・・・」 彼女は拗ねたようにまた俯いた。 僕は今までの彼女のお母さんとのやりとりを正直に話した。 無理しないで」 「え?」 「君らしい君でいてね。 そして強く。 大きな声で叫んだりもして。 「雄喜・・・」 「うん?」 「一緒の修学旅行、楽しみだね」 彼女は顔を見上げて嬉しそうに言った。 その使い慣れない言葉を使った僕自身が驚いていた。 泉は僕をきつく抱きしめ返した。 「どうする、神楽?」 ヒラリと紙切れをテーブルに置いた羽鳥が、得意なわざとらしい笑みを浮かべて僕に問いかけた。 お父さんやお母さん、友達にはいつも明るい笑顔を見せながら、何事も無いようにいつも平然として。 それらを振り切るように、僕は君を抱きしめ、温もりを確かめるように唇を重ねた。 お母さんに頼まれてたというのは秘密だった。 「なに?」 「・・・・・」 彼女は黙ったまま俯いていた。 無理やり付き合せちゃって」 彼女の声が僕の声を遮る。 実はあの子、今日発作を起こしてね。 君を狙う組織も、君を囮にすると決めたマトリも、それを受け入れている君にすら。 彼女はにこりと笑った。 或いは、下記タグをコピー、貼り付けしてお使いください。 彼女の瞳はとても澄んでいて、そして眩く輝いていた。 そんな笑顔をめざしたい。 彼女から目を逸らすことができなかった。 夜に来る連絡なんて、いいことなんてあまりない。 「謝るのは私だよ。 ごめんない」 「いえ。 「もう帰る時間・・・だね」 彼女は淋しそうな声で呟くように言った。 僕はそれでも心の中で叫び続けた。 長い廊下の向こうに入口から明かりが漏れる病室が見えた。 素直じゃなくてごめんね」 僕は黙ったまま首を横に振った。 心でそう叫んだ。 まだ消灯時間になっていないと思うが、部屋のメイン照明は消えていて、オレンジ色の常夜灯だけが寂しく灯っていた。 彼女がとても愛おしい・・・そう感じた。 どうも病室が変わったようだ。 彼女の眩しい笑顔は彼女の強さの象徴だと。 中学の時はほとんど入院と病院通いで全然学校に行けなくてさ。 「雄喜・・・泣いてるの?」 「ごめんね・・・」 僕は擦れた声で答えた。 こんなにも人を愛しく思えたことはなかった。 その奥の病室の前の椅子に彼女のお母さんが座っている。 僕はベッドの上から手を伸して画面を見る。 「でも……もし私の身体がこの体質じじゃなかったら、神楽さんに出会えなかった……」 「まぁね」 「だから……私はこの身体で、よかったって思います」 「……っ」 僕はふっと低く笑った。 このまま眠って、ずっと目が覚めなかったらどうしようって思っちゃうの・・・」 僕は大きな間違いをしていた。 こんな風に明るく軽いキャラ続けたの。 「あのさ・・・」 彼女が僕を呼び止めた。 待ってる」 「じゃあ・・・帰るね・・・」 「うん」 帰りたくなかった。 なのに、僕は何もできない。 僕は嫌な予感がした。 僕の姿に気づいたようだ。 「いい? じゃあ、いつものように先に目を逸らしたほうが負けだからね。 ねぇ……僕が君にしてあげられることは、何? 胸がしめつけられ、僕は下唇を噛んだ。 彼女に僕の気持ちが伝わったのだろうか。 僕は黙って激しく首を横に振った。 でも声にならなかった。 そして静かにドアを開けた。 好きだ! 咲季、君が好きだ! やはり声にはならなかった。 僕はその時、意識も無く自分の両腕で彼女を引き寄せた。 「でも、他に方法はありません……」 震えそうな声で、しかし決然と告げられたその言葉に、僕の眉間には深い皺が寄った。 「そうか。 「どういうこと?・・・」 彼女は問いただすような口調で言った。 「雄喜と・・・もう逢えなくなるのかな・・・」 彼女が寂しそうに呟いた。 ごめん」 「ごめんね。 「でも本当はね・・・正直言うとけっこう辛かったんだ、別の自分を演じるのって。 と身震いしました。 でもそれは許されない。 「笑ってよ〜」のフレーズはすぐ出てきましたね。 名所やおもしろそうな所、チェックしとくよ」 「あと、美味しいスイーツのお店も忘れないでね」 「オッケー」 「あとさ、あとさ・・・」 彼女はわざと大袈裟にはしゃいでいるように見えた。 だって君がさらっとそんなこと言えるなんて、成長したなあって」 「そう?」 僕はそんなに笑わなくてもいいのにと思いながら苦笑いをした。 「玲……っ」 「……んっ」 唇の隙間で吐息をこぼす君。 悪い予想をすれば、数え切れないほど浮かび上がった。 そんな彼女を見て、僕はまた何も言えなくなった。 僕の心の中は不安な気持ちでいっぱいになっていた。 「咲季に会ってあげてくれる? もしかして、あなただったらあの子も落ち着くんじゃないかと思って。 いつものバー。 彼女はその声にびっくりして黙り込んだ。 何も考えてなかった。 いや、絶対に。 僕は着替えもろくにせずに、すぐに病院へと向かった。 「ううん、これが私だよ。 ご縁に感謝。 企画課のメンバーに君のことを任せろって言うの?あとからの情報じゃ、君を守れないんだよ」 誰よりも、大切な君を。 こんなに早いなら迎えに行ったんだけど」 僕は呆れ顔で泉を見下ろしながら、そっと彼女の乱れた髪を指で梳かした。 私大丈夫だから」 「だから、何言ってるの?」 「病人の女の子と会っててもつまんないしね」 「やめろよ!」 僕は思わず怒鳴ってしまった。 狙いは私なので」 「ふーん」 沈黙が二人を包んだ。 All Rights Reserved 「 」では、著作権保護の観点より歌詞の印刷行為を禁止しています。 もうダメかもしれないって・・・。 彼女の腕が僕の体を強く抱きしめてくるのを感じた。 まるで不安をかき消すかのように。 みんなにお別れも言えないじゃん」 「何、弱気になってるんだよ。 僕はメールに指定された病室へ向かう。 いったい何があったのだろうか。 「泉が言う何かが起こった時、僕は君の側にいてあげられない。 「フフッ、また謝ってる」 「ごめんね・・・」 抑え込んでいた涙がついに溢れ出した。 「玲……」 お人好しで無防備な恋人。 そう分かった時、僕は自分に絶望した。 その夜は奇しくも満月だった。 「雄喜・・・ありがと・・・」 彼女が耳元で囁いた。 「あの子はさ、自分が役に立てるならって、きっと仕事なら何でもこなすよ。 ブログにお越しいただきありがとうございます。 僕の言葉は声にならなかった。 彼女の香りが僕の心までも包み込む。 でもさ、明日だなんていきなりすぎるよ。 どうやら僕をお母さんと勘違いしているようだ。 彼女はずっと病気のことを隠しながら学校生活を続けてきたんだ。 新妻聖子さん『道化師のソネット』の歌詞 ドウケシノソネット words by サダマサシ music by サダマサシ Performed by ニイヅマセイコ. [newpage] アトリエに戻ると、 入り口には泉が立っていた。 「無事だったから良かったものの……自分が今、どんな奴らに狙われてるかもっと自覚して」 「っ、すみません」 「別に謝ってほしいわけじゃないんだけど」 「そのことで、実はお話があって」 僕はデスクに束になって置かれているデザイン画を手にとって、君の言葉に耳を傾けた。 「神楽に話したくても話せないこともあるだろう」 重苦しい空気に嫌気がさす。 出来事の全てに、無性にイライラした。 彼女とは何回目の睨めっこだろう。 腕を離し、泉を真正面から見つめた。 どの人も多かれ少なかれしんどいことも 超えてこられてると思います。 そんな恐い顔しなくてもいいじゃん。 何もできない自分が悔しかった。 本当に当たり前なことだったんだ。 何か言ってあげることすらできない。 「あのさ、大丈夫じゃない時は、大丈夫だなんて言わないで」 「……っ」 「怖がってる……本当は」 いっぱいになった心から溢れるように、泉の瞳が滲む。 「今日は最後ってことだよ。 笑っておくれよ 僕のために 優しい言葉なんかより いつでも街の中で 僕を誘うように手を引くように 笑っておくれよ 僕のために 一人で心閉ざさないで 一人で歩かないで 悲しい顔しないで 笑っておくれよ 正しさや嘘もわからぬ時代に僕等は生まれた ひどく優しい歌が消えてゆくようで何だか不安だけど その答えは君の中でゆっくりと解けてゆく 信じてみなよ 君のことを 運命なんか気にしないで 今まで歩いてきた 沢山の足跡を信じていきなよ 街の風は 君を凍えさせるけれど 走り続けるんだ 君の体はいつか ボロボロになるけれど 心は温かくなる 今、光は君の姿 ゆっくりと包み込む 街の風は 君を凍えさせるけれど 走り続けるんだ 君の体はいつか ボロボロになるけれど 心は温かくなる 今、光は君の姿 ゆっくりと包み込む 笑っておくれよ 基本情報. 自分が一番大切にしたいと思う人が今、目の前でこんなに苦しく、辛く、悲しい思いをしているのに。 生きている限りね。 僕は彼女は強い人間だと思い込んでいた。 笑顔はそれを全てこえてきた先にあるのかなぁと。 その日の夜、僕はいつものように自分の部屋でベッドに横たわりながら本を読んでいた。 死ぬのが怖くない人間なんているはずがない。 「何、言ってるの?」 「雄喜、もう帰っていいよ。 僕は大馬鹿野郎だった。 もっと悪いことに、命の危険に晒されるかもしれない。 「だから高校入ってからは思い切って自分を変えようと思ってキャラ変えたんだ。 「どうして・・・?」 「あの・・・君のお母さんに呼ばれて来たんだ」 僕が正直にそう言うと、彼女の顔から笑顔がスッと消えた。 「ごめん。 臆病で、弱虫で、泣き虫で・・・」 彼女の目からひとしずくの涙がこぼれ落ちる。 バラエティ番組にさだまさしが出たの見ました さだまさしって凄い。 「それで、あの子急に不安になっちゃったみたいで・・・ちょっと精神的に不安定になって」 「・・・・・」 「あの子、さっきまでずっと泣いていたの。 胸がぎゅっと思い切り締め付けられた。 「そうか。 つきたくなかった。 どんなに怖かっただろう・・・。 そう言いたかった。 雄喜にだけは本当のこと言おうと思ってたんだよ、何度も何度も。 onコード等、複雑なコードは使用しておりません。 「あの・・・こんばんは・・・」 僕は恐る恐る声を掛けた。 その女性の看護師さんは、僕らに消灯時間のことを伝えると、次の病室へと向かった。 僕が・・・」 「もう・・・いいから!」 さっきより強い口調の彼女の声が僕の声を遮る。 「ごめんね・・・僕・・・何もしてあげられない」 「いいよ・・・もう何も言わなくて・・・」 彼女の僕の体を掴む力がさらに強くなるのを感じた。 とても不思議な感覚に僕は包まれていた。 彼女の頬の温もりが僕の頬に伝わる。 それしか・・・できなかった。 「わたし・・・・死ぬの・・・怖いよ・・・」 震える手、震える声。 看護師さんの消灯の見回りだった。 涙が溢れそうになる。 こんな時間に・・・まさか彼女の身に何かあったのだろうか。 なれるとも思わないし。 本当の病気のこと知ったら私のこと『可哀そうな病気の女の子』って目で見ちゃうでしょ」 「それは・・・」 「私ね、生まれた頃はせいぜい十歳か十一歳くらいまでしか生きられないって言われてたらしいの。 「……今日は、遅くなるって言ってなかった?」 「予定より早く仕事が終わりまして……」 「なら、連絡の一本もよこしなよ。 そんな自分が情けなく、悔しかった。 新妻聖子さん『道化師のソネット』の歌詞をブログ等にリンクしたい場合、下記のURLをお使いくださいませ。 病み付きになりそうだ。 ただ彼女を包みこんだ。 「手術って、いつですか?」 「明日の・・・午後」 「あした?」 僕は驚きのあまり思わず叫んだ。 夜の病院の廊下は薄暗かった。 『笑ってよ 君のために 笑ってよ 僕のために 僕達は小さな舟に 哀しみという荷物を積んで 時の流れを下ってゆく舟人たちのようだね 君のその小さな手には 持ちきれない程の哀しみを せめて笑顔が救うのなら 僕は道化師になれるよ 笑ってよ 君のために 笑ってよ 僕のために きっと誰もが 同じ河のほとりを歩いている 僕らは別々の山を それぞれの高さ目指して 息もつかずに登ってゆく 山びと達のようだね 君のその小さな腕に 支えきれない程の哀しみを せめて笑顔が救うのなら 僕は道化師になろう 笑ってよ 君のために 笑ってよ 僕のために いつか真実に 笑いながら話せる日がくるから 笑ってよ 君のために 笑ってよ 僕のために 笑ってよ 君のために 笑ってよ 僕のために』 笑顔がとびっきりステキな方には その真逆くらいにその方がかかえておられる、大きなものがあるのかもと思います。 心配なんでしょ?」 僕はテーブルに置かれたその書類を、恨みがましく見下ろした。 「どうしたの?」 「あのさ、最後に・・・一回睨めっこ・・・してくれる?」 「何だよ! 最後って!」 僕は思わず強い口調になってしまった。 どれくらいの時間が経ったのだろうか。 僕はそのまま一度も振り返らずに、バーをあとにした。 「雄喜・・・わたし・・・怖い・・・」 とても小さな震えるような声だった。 彼女のお母さんがこちらを向いた。 あの太陽のように明るい彼女が・・・そう思った。 もう帰らなきゃいけない時間だった。 僕は黙って大きく首を横に振った。

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